所蔵資料CPAS第二次世界大戦期プロパガンダポスターコレクションコレクション概要
第二次世界大戦期(1941-1945)アメリカ合衆国のプロパガンダポスター90点。米スタンフォード大学に所蔵されていましたが、日本人関係者を介して一部をCPASが1983年に購入し、東京大学デジタルアーカイブズ構築事業によりデジタル化し、2021年8月からWeb上にて公開しています。
解説
ここに展示するのは、第二次世界体制下のアメリカ合衆国で作成されたポスタ−です。
当時のこうしたポスタ−は、作成者により三種類に大別できます。ひとつは、軍隊を中心とする政府諸機関が国民に兵員募集、戦争への協力などを訴えたもの。もうひとつは、民間会社が自社の戦争協力を世間に宣伝し、それと同時に生産力の向上を社員に呼びかけたもの。最後が、愛国団体の作成によるものなどです。 ここでは、戦時下のアメリカ社会において、アメリカの信条がデザインやキャッチ・コピ−にどのように描かれているのか、ポスタ−の図像資料としての面白さをまず見ていただきたいと思います。たとえば、合衆国政府につけられたニックネ−ムが擬人化された存在であるアンクル・サム。星条旗にちなんで星が並んだ帽子をかぶり、縞目のズボンとシャツを着て登場することの多いサムが、ここでも登場してきます。ただ皆さんがここでご覧になるサムは、やみくもに戦争への参加を求めるだけでなく、戦争終了後に兵士が政府の支援で高等教育を受けられることも宣伝しています。着ているシャツが珍しく星柄なのは、いつもと違うその役柄を象徴しているのかもしれせん。アメリカの大統領のうち今でも最も尊敬を集めているのが、南北戦争の国難を収めた第16代大統領エイブラハム・リンカンです。まだその南北戦争の戦火が開かれる以前、故郷のイリノイ州の共和党大会で、「合衆国の領土が半分は奴隷州であり半分が自由州である状態で政府がいつまでも耐えられはずはないのです」と彼は演説し、南部諸州の奴隷制度を批判したことがあります。この時彼が用いた言葉、.... this government cannot endure permanently half slave and half free.... は非常に有名になり、南北戦争を象徴する言葉としてアメリカの国民にその後も長く記憶されることになりました。皆さんがここでご覧になる戦時国債の宣伝に登場するリンカ−ンの言葉は、その演説の言葉をもじったものなのです。アンクル・サムがアメリカ文化史上に登場するのが1812年、リンカ−ンの演説が行われたのが1858年ですから、連綿と続く歴史意識、国民神話を踏まえてこれらのポスタ−が準備されたことがお判りいただけるでしょう。 ポスタ−が訴える内容についても歴史の文脈を踏まえて、さまざまの解釈、批判を加えることができます。たとえば、大きな戦争を経るごとにそこで活躍した女性の社会的地位が向上するというのがアメリカ合衆国の歴史の伝統です。19世紀のアメリカ女性教育の発展の端緒は18世紀におけるアメリカ独立戦争時の女性の活躍に在るといって過言ではありませんし、1919年に女性参政権が承認された背景に、第一次世界大戦下のアメリカ産業における女性労働者の活躍などが在ることはよく指摘される通りです。第二次世界大戦でもアメリカの女性はいわゆる銃後(the home front)を中心に大きな働きをし、社会における活躍の可能性を戦後へつなげていきました。戦時中、社会もそれを期待したのです。ここでご覧になるポスタ−でも、愛国心を煽る星条旗の図柄を交えながら、非戦闘軍属として、あるいは白衣の天使として、戦争へ協力してくれるよう、政府が強く女性に呼びかけているのがお判りいただけると思います。 現在アメリカ研究資料センタ−には 7万点を越す図書のほかに、こうした貴重な視聴覚資料が多数所蔵されております。そして研究者・教員ばかりでなく、学内外の学生にも論文作成の資料としてそれらの図書、視聴覚資料の自由な閲覧が許されていることを、最後に紹介させていただきます。開かれた研究資料センタ−として、アメリカ研究に興味を持たれる方すべての来訪をセンタ−は歓迎しています。 画像データ等の利用条件東京大学大学院総合文化研究科付属アメリカ太平洋地域研究センター(以下「当センター」)が公開する著作権の保護対象ではない資料の画像データ、それに関連するメタデータ等(以下「画像データ等」)の利用条件は、以下のとおりです。
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