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共同研究紹介


アメリカニゼーションの国際比較

研究代表者:油井 大三郎

 1998年7月より表記の研究プロジェクトが新たに発足しました。近年、日米間の経済摩擦が長期化する中で米国側で「日本異質論」が高まったり、冷戦終結後の世界では「文明の衝突」が常態となるといった言説が注目を浴びるなど、異文化・文明間の摩擦を強調する議論が目立っています。しかし、第二次大戦後の日本は占領下でかなりの「アメリカニゼーション」を経験しましたし、高度経済成長期には大衆文化レベルのそれも顕著でした。それにも拘わらず、戦後50年を経ても「日本異質論」が登場してくるのは、異文化間の接触や融合の難しさを示しています。

 また、米国国内では「多文化主義」をめぐる論争の過程で、WASP文化への同化強制という意味での「アメリカニゼーション」が批判されるようになりましたが、同時に「多文化主義」は米国の「解体」をもたらすという批判も高まっています。そのため、様々なエスニック・グループの文化的独自性を尊重しながら、新たな「国民統合」を実現する方途が現在模索されていると言えます。さらに、近年の経済活動や環境保護における「グローバリゼーション」の進展の中で、「グローバル・スタンダード」の多くが米国から発進されるものである点をとらえて、「グローバリゼーション」は同時にグローバルな「アメリカニゼーション」であるとの意見も目立ち始めています。

 このように「アメリカニゼーション」という言葉は、過去の米国史における移民の同化過程でみられた古臭い概念のように見えながらも、現在でも新たな意味で再浮上しています。そこで、この研究プロジェクトでは、

 1)米国が外国を占領や植民地化するなどして「アメリカニゼーション」を
   進めた事例(日本、フィリピンなど)

 2)米国内部で少数のエスニック・グループを「主流文化」に同化させてい
   った際の「アメリカニゼーション」の事例との国際比較を通じて「アメ
   リカニゼーション」概念の批判的、歴史的相対化

を目指そうとするものです。

 メンバーは、油井大三郎(東京大学)を代表者とし、遠藤泰生(東京大学)、辻内鏡人(一橋大学)、佐藤勘治(獨協大学)、中野聡(神戸大学)、矢口祐人(東京大学)、阿部小涼(琉球大学)など十数名で構成されています。2〜3年間研究会を継続した上で、成果の出版ができればと考えています。


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