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共同研究紹介


クレオールの視点から見た環カリブ広域移民研究

研究代表者:遠藤 泰生

 研究プロジェクト『クレオールの視点から見た環カリブ広域移民研究』には、研究代表者であるアメリカ研究資料センター教官ほか、同教官が協力講座担当者として所属する東京大学大学院地域文化研究専攻の教官、助手等が構成員として加わっている。

「民族」概念の再検討などをとおして、移民問題、国民国家の歴史などを考えてきたメンバーが、文化の創造性の問題におけるクレオールの可能性をアメリカ合衆国とカリブ海諸国との比較に探るのがこの研究プロジェクトの主目的である。ただし、細かな地域研究の分析に埋没することなく世界的な視野で北米地域研究を相対化することが求められるなか、ドイツ、フランス、中国などを専門とする地域研究者にもメンバーに加わってもらい、本プロジェクトは開かれたアメリカ研究の可能性をも探っている。

 15世紀における「新世界」の「発見」以来、ヨーロッパ文化の継承、展開が「新世界」における植民者の企図であったにせよ、その後それらの地域では、大西洋を囲む異文化の衝突と融合が繰り返された。けれども、合衆国にせよ、カリブ海諸国にせよ、同じ「新世界」の国々でありながら、文化の混交については様々な評価が近年成されている。例えば混交が大きな活力を自国の国民文化にもたらしたことは認めるにせよ、その活力をアメリカ国民、あるいはカリブ諸国の国民がどれだけ積極的に評価してきたのかは議論が分かれる。あるいは文化の混交は、「国民文化」の神話を覆すものとしてこそ大きな評価をうるものなのか。そうした疑問が次々に出される中、まだ文学批評、あるいは文化評論の限られた分野でのみ、「クレオール」の問題は脚光を浴びているように見える。しかし、文化が実際に立ち上がる現場としての歴史、経済、政治の研究においても、今後この問題にはさらに検討を加える必要がある。

 以上の問題関心のもと、プロジェクトではメンバーが現地調査を行うほか、センターにおいて国際ミニシンポジウムなどを開催し、意見の交換をしてきた。その成果はすでに『東京大学アメリカンスタディーズ・第四号』(1999、3月)に一部発表した。今後はさらに研究を進め、最終的な報告を研究書にまとめる予定である。

[プロジェクト・メンバー]
足立信彦(大学院総合文化研究科助教授)、阿部小涼(琉球大学法文学部講師)、遠藤泰生(センタープロジェクト代表、総合文化研究科付属アメリカ太平洋地域研究センター助教授)、木村秀雄(科研プロジェクト代表、大学院総合文化研究科教授)、柴田元幸(大学院人文社会研究科助教授)、高橋均(大学院総合文化研究科助教授)、増田一夫(大学院総合文化研究科助教授)、村田雄二郎(大学院総合文化研究科助教授) メアリ・アン・ゴッサー(フロリダ・アトランティック大学助教授)、ローレンス・ブレイナー(ボストン大学助教授)、ワシントン・ロサス(チリ国立大学助教授)


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