文部省科学研究費補助金「特定領域研究(B)」



生態系・環境保護班 1998年度活動概要・研究会議事録


1998年度活動概要

研究代表者(松原)は、アメリカにおける「リスク」に対する積極的積極的社会意識がアメリカ環境運動、環境政策の積極性を説明することを指摘した。石(アメリカ大陸における環境管理の実態分析)は、グローバルな視野でかかれた環境保護運動の初の本格的通史『地球環境運動全史』を完訳した。繁桝(アジア太平洋地域の環境保護心理分析)は、心理学的立場からアメリカにおける心理学的リスクの計測実験のデータ・サーベイを行った。小宮山(アジア太平洋の温暖化防止をめぐる地域協力分析)は、具体的に西オーストラリアを選定した上で、地球温暖化の地域シュミレーションを行った。細野(日米の世論と環境政治分析)は、「環境政策情報データ・ベース」の概念構築の報告書を作成した。北村(アメリカ環境法をめぐる政治文化分析)は、アメリカの環境訴訟の新しい形式「市民訴訟」について、連邦法を詳細に検討し、『ジュリスト』を通じて広く日本の法曹界に紹介した。

1998年度研究会議事録
凡例:1)会議あるいは報告タイトル、2)報告者、3)日時、 4)場所、5)コメンテイターなど、6)会議の概要

第1回

1)アジア太平洋地域における環境保護における米国の位置と役割

2)松原望(東京大学)

3)98年10月24日

4)東京大学

6)アメリカ環境政策の形成の研究(今後の方針)


第2回

1)アメリカにおける環境リスク研究の基礎にあるもの

2)松原望(東京大学)

3)98年12月5日

4)東京大学

6)概要:

「オゾンマン」がゴア副大統領のことであるように、アメリカ環境法は、実施はともかくも、その構想、政策方法において世界各国の環境政策のお手本、範型を与えてきた。ハワイにおける地球温暖化発見、オゾンホールの発見など、地球レベル環境問題の設定などにおいても、世界の先頭を切っている。また、アメリカとは「リスクの国」(フランス語で A mes risque )であるように環境リスクの研究がさかんであり、それが先導的環境政策の広い知的、学問的裾野を作り、それを支えている。アメリカ環境政策の歴史および最近のリスク研究の一端を紹介した。


第3回

1)権威不信とアメリカ環境法─法制度を支える政治文化と実施過程の問題点─

2)北村喜宣(横浜国立大)

3)99年1月30日

4)東京大学

6)概要:

あらゆる法制度はその社会の政治的・文化的特徴を反映しており、決して中立的存在ではない。議会と行政とさまざまなインタレスト・グループの思惑が複雑に絡み合った政治的調整の結果として制定される。環境法もその例外でない。アメリカ環境法の特徴的仕組み、権威不信の伝統と制度の特徴、分散された意思決定システムと多元的民主主義、制度運用の実態と指摘される問題点、改善に関する視点などを詳細に論じた。