文部省科学研究費補助金「特定領域研究(B)」



文化融合・接触班 1998年度活動概要・研究会議事録


1998年度活動概要

平成10年度は、多文化主義とアメリカを主要な研究テーマとし、エスニシティの意識革命が新しい文化の創造にどう関わってきたかを考察した。具体的には、まず、多文化主義論争の検証からはじめ、アジア系アメリカ人の文化・文学研究を班の研究会で議論した。一方、日本の伝統芸術のアメリカでの受容と変容については、ジェイムズ・ブランドン、サミュエル・ライター両教授との公開セミナーを開催した。一方、文化接触・融合班の一つの重要なテーマである女性史研究については、前ASA、およびOAH会長リンダ・カーバー教授との研究会で、アメリカにおける最新の研究動向を確認し、来年度の本格的研究の基礎固めをおこなった。また、代表者の瀧田が1999年3月アメリカ(日系人国立博物館ほか)に短期出張した。

1998年度研究会議事録
凡例:1)会議あるいは報告タイトル、2)報告者、3)日時、 4)場所、5)コメンテイターなど、6)会議の概要

第1回

1)Women's Obligations to Citizenship

2)Linda K. Kerber (University of Iowa)

3)98年12月1日

4)東京大学

6)概要:

リンダ・カーバー教授は、アメリカ女性史研究を代表する学者であり、すでにASA、およびOAHの会長を務められたかたである。私たちの班の研究テーマでもある女性と社会について、今回は新しい研究分野を紹介された。また多くの出席者とディスカッションができたことも大きな収穫であった。


第2回

1)US-Japan Cultural Interactions: Kabuki's Case

2)James R. Brandon (University of Hawaii), Samuel L. Leiter (City University of New York)

3)99年1月24日

4)東京大学

6)概要:

アメリカにおける歌舞伎研究の文字どおり第一人者であられるブランドン先生と、ニューヨークのアクティヴな歌舞伎研究者ライター先生をお招きしての、新春にふさわしい研究会が開催できたことは真に幸いであった。ブランドン先生は特別にハワイ大学での学生の歌舞伎実演のヴィデオも紹介くださり、私たちは、英語で流れる長唄にのせて勧進帳を観るという、貴重な体験をすることができた。ライター先生は現在取り組んでおられる歌舞伎英訳のプロジェクトについてもお話くださり、日本の文化の越境の可能性についての示唆に富む午後の集りであった。そのあと、日比野啓さん(研究協力者・東京大学アメリカ科助手)による "Hanagumi Shibai's Tempest"も、今度は日本側の他文化受容の一表現として、説得力のある発表であった。