文部省科学研究費補助金「特定領域研究(B)」




(1)申請領域の研究の具体的な内容

本研究プロジェクトにおいては、1980-90年代を中心とするアジア太平洋地域の構造変動における米国の位置と役割を学際的に解明することによって、21世紀におけるアジア太平洋地域の発展に米国がどのような貢献をするのかを予想し、日本が取るべき進路についても必要な提言を行おうとする。その際、構造変動の諸側面を多面的かつ総合的に解明するため、A01.政治外交、A02.安全保障、A03.経済変動、A04.情報・社会変動、A05.文化接触・融合、A06.生態系・環境保護、という6研究項目に分けた上で、その相互関連を解明してゆく。その際、アジア太平洋地域における地域協力が1989年のAPEC発足に結実した過程における米国の役割を解明するとともに、発足後のAPECやその他の地域協力の場で米国が果たしてきた役割を追跡した上で、21世紀におけるアジア太平洋地域の発展に米国が果たしうる貢献の性格を予測する。とくに、地域協力が地域統合にまで発展しうるかどうか、近未来的な予測にも努力したい。

(2)研究項目の研究内容

研究項目は次の6項目とし、主な研究内容は次の通りである。

A01.政治外交
 1980-90年代を中心とする米国のアジア太平洋地域に対する外交政策の推移を、米国の世界政策との関連に留意しながら、分析するとともに、21世紀における米国の当該政策の展開を予想する。>

A02.安全保障
 米ソ間の冷戦終結後の米国のアジア太平洋地域に対する安全保障政策の推移を分析するが、とくに、北東アジア、東南アジア、オセアニアに対する政策の比較と相関に留意しながら、21世紀における政策展開を予想する。

A03.経済変動
 1970-80年代に進行した米国経済のリストラクチャリングや再生がアジア太平洋地域に及ぼした影響を分析するとともに、アジア太平洋地域における経済協力の進展に米国が果たしてきた機能を解明することによって、21世紀における米国の役割を予測する。

A04.情報・社会変動
 1980-90年代の米国社会で進行した情報革命の実態を分析するとともに、それがアジア太平洋地域に及ぼした衝撃を検討し、21世紀の同地域における情報伝達面での米国の役割を予測する。また、1960年代から始まる米国へのアジア系移民の急増や環太平洋地域におけるひとの移動一般の活発化が米国社会とアジア太平洋地域に与えた影響を検討するとともに、21世紀における動向を予測する。

A05.文化接触・融合
 1960年代以来の米国社会で進行した「多文化主義」などの新しい自己意識の形成とアジア太平洋地域に対する認識の変化を分析するとともに、米国とアジア太平洋地域の間における文化接触による文化摩擦や文化融合の進展を検証する。それによって21世紀に出現するアジア太平洋地域における文化状況を予測し、そこにおける米国の役割を検討する。

A06.生態系・環境保護
 1980-90年代におけるアジア太平洋地域における生態系の変化と環境保護をめぐる地域協力の実態を検討するとともに、米国の環境保護政策や運動の動向を検証する。それによって、21世紀におけるアジア太平洋地域における環境保護をめぐる地域協力における米国の役割を予測する。

以上の6計画研究班を構成した上で、総括班を設定し、全体の調整を図るとともに、国内研究会の開催やニューズレターの刊行などによって研究班間の連携を密にしてゆく。また、現地調査や日本への招聘をつうじて外国の関連研究者とも緊密な連携を結び、国際シンポジウムの開催などを準備する。さらに、総括班を中心として情報ネットワークを整備し、当該領域内の研究班同士、あるいは研究班と世界各地の研究拠点を結ぶインタラクティヴな研究ネットワークの構築に努める。また、5年間に蓄積される研究資源や成果はデータベース化し、ネットワークを介して一般の利用に供する(図4.参照)。