文部省科学研究費補助金「特定領域研究(B)」




アジア太平洋地域の構造変動における米国の位置と役割を多面的かつ総合的に解明しようとする本プロジェクトにおいては、この課題の解明に不可欠である以下の6研究項目に分割し、それぞれ代表者と3名の分担者からなる計画研究班を設定する。その上で、全体の相互関連をつけるために、各計画研究班の代表者と、特定領域申請代表者および事務担当者、情報ネットワーク・データベース構築担当者、そして評価担当者からなる総括班を設ける。 計画研究班の研究項目は、主として方法論的区分に対応して設定したが、具体的には、以下の6項目からなっている。
A01.政治外交 (代表者:五十嵐武士)
A02.安全保障 (代表者:山本吉宣)
A03.経済変動 (代表者:渋谷博史)
A04.情報・社会変動 (代表者:庄司興吉)
A05.文化接触・融合 (代表者:瀧田佳子)
A06.生態系・環境保護 (代表者:松原望)
これらの計画研究班が担当する研究項目は、それぞれアジア太平洋地域の生態系や社会経済構造、さらには政治・文化システムにかかわる重要な側面であるが、それぞれのレベルの中でアジア太平洋地域を構成する諸国間の対抗と協調の現れ方には差異がみられる。また、地域協力が進展する場合にも、どのレベルから始まり、どのレベルに連動し、最終的には「地域統合」にまで至る可能性があるのかどうか、も具体的に検証してゆく必要がある(図3参照)。

そこで、本研究プロジェクトにおいては、各研究項目のレベルに即してアジア太平洋地域の構造変動における米国の位置と役割を検証してゆくが、同時に、EUからの影響などアジア太平洋地域以外の地域からのインパクトや世界システムからの影響もそれぞれのレベルで考慮する必要があるし、とくに、総括班においてはその点に留意して研究全体をまとめてゆく必要がある。

研究期間は5年間とし、初年度においては、米国の政府・議会・大学・民間研究機関などの政策文書、報告書、研究書を現地調査やインターネットなどを通じて収集する。またサーヴァを設置して独自の研究ネットワークを構築し、ホームページ等を通じてデータの収集状況を適宜公開し、データベースの設計に着手する。2年度においては、米国の企業や労働団体、農業団体などの政策文書や報告書などを現地調査やアンケートなどによって収集する。3年度には文化接触・融合、環境・技術関係の資料の収集にあたるとともに、国際シンポジウムを開催して米国や他のアジア太平洋諸国の米国研究者との交流を図る。4年度には、アジア太平洋地域に対する米国の国民世論の変化を世論調査機関の報告書や独自の調査によって検討する。最後に、5年度においては蓄積した資料のデータベースを一般の利用に供するべく、インターネット上で公開してゆく。また、まとめの国際シンポジウムを開催して、日・英両語で著した成果を冊子体で刊行し、インターネット上でも公開する。

研究経費については、アジア太平洋地域に対する米国の政府、議会、民間団体などの認識や政策対応が把握できる基本的資料の収集を図るため、設備備品費の中の文献購入費を最初の3年間に重点的に配分する。また、現地調査による文献資料の収集や関連機関へのインタビューなどを可能にするため、研究代表者による米国への調査旅費を5年間を通じて配分するとともに、アジア太平洋地域から関連研究者を招聘し、研究交流を促進してゆく。さらに、各計画研究班別や合同の研究会、全体研究会の開催費用やニューズレターの刊行費を5年間に渡って重点的に配分するとともに、国際シンポジウムの開催に関連した諸経費も3年目と5年目に重点的に配分した。また、これらの成果を、世界大の研究ネットワークの共有可能な資源とするべく、適度なスペックを備えた中堅規模のサーヴァと端末機器の整備も重視した。これらを利用してインターネットによる情報収集のみならず、データベース構築により研究成果を共有資源とし、ホームページ等を介した世界規模の研究ネットワーク形成の促進を実現する。